主婦(主夫)の休業損害に強い弁護士

休業損害とは

休業損害とは、交通事故によって負った傷害のために休業を余儀なくされ、得られるはずであった収入が得られなかったことによる損害をいいます。
換言しますと、休業損害は、傷害が治癒し、又は症状が固定するまでに生じた収入の減少です。
なお、後遺障害が残り、労働能力を喪失したために生じる症状固定後の収入の減少は、後遺障害による逸失利益として、休業損害とは別個に考えられています。

給与所得者は、休業によって現実に収入が減少した分が休業損害になり、事故前の収入を基礎収入として、それに休業日数を乗じて算出します。
基礎収入は、事故前3か月間の平均賃金を基にして1日あたりの金額を算出します。
基本給のほか各種手当を含めて算出し、また、損害賠償金は非課税であるため、所得税や住民税、社会保険料等は控除しません。

主婦にも休業損害が認められる

主婦は、交通事故により家事に従事することができなかったとしても、現実の収入の減少は生じないため、休業損害は発生しないと考えられがちです。
しかし、交通事故の賠償実務では、専ら家庭で家事労働に従事している専業主婦であっても、休業損害が認められます。

現在、主婦の基礎収入は、賃金センサス(厚生労働省が毎年実施している賃金構造基本統計調査の結果)第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴計・全年齢の女子労働者の平均賃金を基礎とするのが一般的です。
平成28年の賃金センサスでは、第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴計・全年齢の女子労働者の平均賃金が376万2300円とされておりますので、1日あたり1万0307円になります。

そして、上記基礎収入を基礎として、傷害のために家事に従事することができなかった期間について休業損害が認められます。
傷害の程度によっては、家事の一部(例えば調理)は従事することができたものの、その他の家事(例えば買い物)については従事できなかったということもありますが、このような場合には割合計算を行うこともあります。

例えば、(1)事故後30日間は、入院中のために全く家事に従事することができず、(2)退院後90日間は50%、(3)その後治療終了までの90日間は20%の家事労働に支障があったというような場合には、
(1)1日あたり1万0307円×30日間×100%=30万9210円
(2)1日あたり1万0307円×90日間×50%=46万3815円
(3)1日あたり1万0307円×90日間×20%=18万5526円
合計 : (1)+(2)+(3)=95万8551円

のように計算します。

兼業主婦の基礎収入は現実の収入と平均賃金を比較して高い方を基礎とする

パートタイマー等をしている兼業主婦の基礎収入は、パートタイマーの現実の収入と前記の平均賃金を比較して高い方を基礎とします。
既に述べましたとおり、平成28年の賃金センサスを用いた場合には、基礎収入が376万2300円(1日あたり1万0307円)になりますので、パートタイマーの現実の収入を大幅に上回ることが多いと思われます。

主婦の休業損害が問題となる場合には弁護士に相談を

以上のとおり、主婦にも休業損害は認められ、しかも年収350万円を超える金額を基礎として計算するため、その金額は相当額に上ります。
しかし、このような知識が浸透していないためか、保険会社から提示される示談案では、主婦の休業損害が全く考慮されていないものや、自賠責保険の支払基準の限度(1日あたり5700円)でしか考慮されていないことが多いように見受けられます。
また、パートタイマー等をしている兼業主婦の場合には、パートタイマー等の収入のみを基礎として休業損害が算出され、主婦としての休業損害が全く考慮されていないことが数多くあります。
したがって、交通事故によって傷害を負い、その結果、家事にも影響があった場合には、弁護士にご相談頂き、主婦の休業損害として適切な金額が提示されているかを相談するのが良いでしょう。