高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、脳外傷によって認知障害や人格変化等の症状が生じる障害を言います。
認知障害とは、記憶・記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害、判断力低下、病識欠落などであり、具体的には、新しいことを学習できない、複数のことを同時に処理できない、行動を計画して実行することができない、周囲の状況に合わせて行動することができない、危険を予測・察知することができないなどがあります。
人格変化としては、受傷前には見られなかった感情易変、不機嫌、攻撃性、暴言・暴力、幼稚、羞恥心の低下、多弁(饒舌)、自発性・活動性低下、病的嫉妬・ねたみ、被害妄想などといった症状があります。
交通事故によって頭に大きな衝撃を受けてから、人格や性格が変わって怒りっぽくなったり、記憶力に異常が生じて新しいことを覚えられなくなったり、同じ話を何度も繰り返すようになったりし、その結果、日常生活でもトラブルが生じるという例が少なくありません。
見落とされやすい障害
脳外傷による高次脳機能障害は、見落とされやすい障害と言われています。
脳外傷による高次脳機能障害が生じるケースでは、受傷直後にその他の重大な傷害を負っていることも多く、診断医が高次脳機能障害の存在に気づかないこともあると言われています。
被害者本人も、自己洞察力が低下しているため症状に気づかず、また、家族等から指摘されても症状の存在を否定することが少なくありません。
家族としても、受傷直後の命の危険がある状況から脱したころには「命が助かって良かった」という思いが強いため、高次脳機能障害にまでは気づかないことが多いとも言われています。
高次脳機能障害の認定
上記のとおり、脳外傷による高次脳機能障害は、見落とされることも多く、認定において困難が伴うと言われています。
そこで、自賠責保険・共済においても、脳外傷による高次脳機能障害について的確に認定をするため、高次脳機能障害の専門部会が設置されており、以下の点を考慮した上で高次脳機能障害にあたるか否かを判断するとされています。
(1)意識障害の有無とその程度
脳外傷による高次脳機能障害は、意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすいことが大きな特徴であり、外傷直後の意識障害がおよそ6時間以上継続するケースでは永続的な高次脳機能障害が残ることが多いと言われています。
このため、脳外傷による高次脳機能障害を判断する上では、意識障害の程度と期間が重要なポイントとなります。
(2)画像所見
脳外傷による高次脳機能障害の主な原因とされているびまん性軸索損傷の場合には、受傷直後の画像では正常に見えることもあるものの、脳内に点状出血を生じていることが多いとされています。
また、脳外傷による高次脳機能障害の特徴として、慢性期に脳室拡大や脳萎縮が生じるとされています。
このため、脳外傷による高次脳機能障害を判断するにあたっては、時間の経過に従って画像検査を行い、脳室拡大・脳萎縮等の有無を確認することが必要であるとされています。
(3)因果関係の判定(他の疾患との識別)
記憶障害・集中力障害・遂行機能障害等の認知障害や、感情易変・自発性低下等の人格変化は、必ずしも脳外傷によって発症するものではありません。
特に、高齢者については、脳外傷ではなく、外傷とは無関係の認知症等により発症することもあるため、事故との因果関係の判定が重要であるとされています。
(4)日常生活状況等の把握
脳外傷による高次脳機能障害について、その障害の有無や程度を把握するためには、診療医の所見だけでなく、家族等の周囲からの情報も重要となります。
そこで、脳外傷による高次脳機能障害が問題となるケースでは、診療医による具体的な所見に加えて、家族や介護者等の日常生活上身近な者に対して日常生活状況の報告が求められています。
高次脳機能障害が疑われる場合には弁護士に相談を
前記のとおり、脳外傷による高次脳機能障害は、見落とされやすい障害と言われています。
しかし他方で、脳外傷による高次脳機能障害が認められた場合には、1級、2級、3級、5級、7級又は9級の後遺障害等級が認定される可能性があり、損害賠償額はかなりの高額に上ります。
また、脳外傷による高次脳機能障害は症状が様々であり、介護の必要性や将来の介護費用に関する損害額が問題となることも少なくありません(詳しくは【将来の介護費用に強い弁護士】をご覧下さい)。
脳外傷による高次脳機能障害が問題となるケースでは、弁護士にも専門的な知識や経験が必要となります。
交通事故によって脳に外傷を負い、その結果、高次脳機能障害が疑われる場合には、高次脳機能障害に強い弁護士にご相談下さい。