逸失利益とは
逸失利益とは、交通事故により被害者に後遺障害が残った場合、又は、被害者が死亡した場合に生じる損害の一つであり、交通事故がなければ得られたであろう将来の収入のことを言います。
交通事故によって被害者が死亡した場合、被害者は、交通事故に遭わなければ、稼働することができたはずであり、その稼働によって一定の収入を得ることができたはずです。
同様に、交通事故によって被害者に後遺障害が残った場合、被害者は、事故に遭わなければ、以前のように問題なく稼働することができたはずであり、その稼働によって一定の収入を得ることができたはずです。
逸失利益は、このような将来の収入の減少を損害として把握するものであり、後遺障害によって生じる逸失利益を「後遺障害逸失利益」、死亡によって生じる逸失利益を「死亡逸失利益」と言います。
休業損害との違い
逸失利益のように、事故に遭わなければ得られたであろう利益を失ったことによって生じる損害を「消極的損害」と言います。
消極的損害には、逸失利益のほかに、「休業損害」というものがあります。
「休業損害」とは、交通事故によって傷害を負い、その治療のために休業を余儀なくされた場合に生じる収入の減少を言います。
「休業損害」も「逸失利益」も、事故に遭わなければ得られたであろう収入の減少を意味するものであり、いずれも消極的損害にあたります。
もっとも、「休業損害」は、傷害が治癒し、又は、症状固定となるまでの期間に生じた収入の減少を指すのに対し、「逸失利益」は、症状固定後に後遺障害によって生じた収入の減少を指します。
「休業損害」は、傷害が治癒し、後遺障害が残存しない場合であっても認められ得るのに対し、「逸失利益」は、原則として、後遺障害が残存する場合、又は、死亡した場合にのみ認められます。
後遺障害逸失利益の算定方式
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
「基礎収入」は、原則として、事故前の収入を基準としますが、無職者や専業主婦等については、厚生労働省の賃金統計調査結果である賃金センサスを用いて算出されます。
「労働能力喪失率」は、原則として、労働能力喪失率表(労働基準監督局長通牒昭32・7・2基発第551号)を参考に算定され、後遺障害等級に応じて、1級~3級:100%、4級:92%、5級:79%、6級:67%、7級:56%、8級:45%、9級:35%、10級:27%、11級:20%、12級:14%、13級:9%、14級:5%とされています。
「労働能力喪失期間」は、原則として症状固定から67歳までの期間とされますが、高齢者の場合には、平均余命の2分の1が労働能力喪失期間とされることもあります。
「ライプニッツ係数」とは、将来得られるはずの利益を一括で取得するために用いられる中間利息控除係数であり、例えば、労働能力喪失期間が10年間の場合には「7.7217」、20年間の場合には「12.4622」、30年間の場合には「15.3725」となります。
死亡逸失利益の算定方式
基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
「基礎収入」は後遺障害逸失利益の場合と同様です。
「1-生活費控除率」は、被害者が死亡した場合には、その後の生活費の支出を免れることになるため、その生活費相当額を控除するための計算になります。
「生活費控除率」は、被害者の性別や家族構成、被扶養者の人数に応じて概ね30%~50%程度で算出されます。
「就労可能年数」は、後遺障害逸失利益における労働能力喪失期間と同様、原則として症状固定から67歳までの期間とされますが、高齢者の場合には、平均余命の2分の1が就労可能年数とされることもあります。
逸失利益についてお悩みの方は弁護士に相談を
逸失利益は、後遺障害の内容がむち打ちによる神経症状の場合、外貌醜状の場合、被害者が事業所得者や会社役員の場合等、ケースによっては、特殊な取扱いが必要となることがあります。
逸失利益についてお悩みの方や疑問がある方は、まずは弁護士にご相談下さい。