自賠責保険と任意保険

自賠責保険とは

「自賠責保険」とは、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済のことであり、自動車損害賠償保障法によって加入が義務付けられている強制加入の保険です。
交通事故によって生命・身体に損害を負った被害者を保護するために設けられている制度であり、自賠責保険に加入せずに自動車を運行の用に供した者には罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されます。
自賠責保険は、あくまで生命・身体に損害を負った被害者を保護する制度ですので、修理費用等の物損については支払の対象となりません。
また、自賠責保険は、被害者に最低限度の補償をするための制度ですので、保険金の額に上限が定められています。具体的には、傷害に関する損害(症状固定までの損害)については120万円、後遺障害に関する損害については後遺障害等級に応じて75万円~4000万円、死亡に関する損害については3000万円に限られています。
他方で、自賠責保険では、重大な過失がない限り、過失相殺はされません。被害者を保護するための制度ですので、一定割合(7割未満)の過失については過失相殺をしないこととされています。なお、7割以上の過失が存在するケースについても、保険金の減額割合は2割~5割とされています。

任意保険とは

「任意保険」は、自賠責保険では補償することができない損害(例えば、自賠責保険の上限額を超える損害、自賠責保険では支払の対象とならない物損等)を担保するために加入する保険です。
自賠責保険と異なり、加入が義務付けられているわけではなく、自動車所有者の任意加入とされているため、任意保険と言います。
現在では、交通事故を起こし、被害者に怪我を負わせてしまった場合(対人賠償責任保険)や被害者に物損を生じさせてしまった場合(対物賠償責任保険)の保険金の額が無制限とされているものがほとんどであり、自動車運転者であれば、万が一のケースに備えて任意保険に加入するのが通常です。
任意保険は、自賠責保険では賄い切れない補償をするためのいわゆる「上乗せ保険」ではありますが、自賠責保険によって補償されるべき金額を含めた一括対応がなされることが通常です。このような一括対応によって、被害者にとっても、自賠責保険と任意保険の両社に対して請求しなければならないという手間を省くことができるというメリットがあります。
また、任意保険には、示談代行が付されているのが通常であり、加害者は、自ら加入する任意保険会社に対して示談代行(被害者との示談交渉)を委託することができます。
その他、車両保険、人身傷害補償保険や無保険者傷害保険など、様々な危険に備えた保険商品が存在し、契約内容に応じて様々な補償を受けることが可能となります。

自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険 任意保険
加入 法律上、自動車運行供用者に対して加入が義務付けられている。 加入するかどうか、どうのような内容の保険に加入するかは自由。
目的 生命・身体に損害を負った被害者を保護するための最低限度の補償。 自賠責保険では補償することができない損害を補うための補償。
支払い金額 支払い金額に上限がある。 対人・対物賠償責任保険は無制限が通常。
支払い対象 人損(生命・身体の損害)に限られ、物損は対象外。 人損・物損の両方を補償対象とするのが通常。
過失相殺 被害者に重大な過失がない限り過失相殺はされない。 過失割合に従って過失相殺される。
示談代行 なし あり

誰しも、自動車を運転する限り、事故を起こしてしまう可能性はあります。
万が一、事故を起こしてしまった場合には、被害者に生じた損害の内容によって、1億円を超える損害賠償責任を負うこともあります。
また、任意保険には、車両保険や人身傷害補償保険、無保険者傷害保険、弁護士費用特約のように、万が一の場合に役立つ保険商品も存在します。
万が一の場合に備えて、任意保険には必ず加入しましょう。